イケメン検事の一途な愛
偶然は突然に
「柾、二次会は?」
「あ、悪ぃ。まだ仕事が残ってるから戻らないと」
「マジか…」
「えぇ~久我君帰っちゃうの~?」
「また今度な」
都内の某ホテルのスカイラウンジを貸切っての披露宴。
大学時代の同級生カップルが、今日結婚した。
付き合いが嫌いなわけじゃない。
どちらかと言えば、交友関係は広い方だ。
検事という職種柄、仕事を理由にすれば、大概早々に離脱出来る。
今日は一日中小雨が降り続いてて、こんな雨の日はゆっくり過ごしたい。
ただそれだけ。
35階のスカイラウンジからの夜景を満喫し、エレベーターで地下駐車場へと向かう。
金曜日の22時過ぎ、さすがに宿泊客も多く、幾つかあるエレベーターはひっきりなしに稼働している。
数分待ち、漸く来たエレベーターに乗り込み【B2】を押す。
扉が閉まると、緩やかに降下し始めた。
運がいい事に誰も乗る人がいないらしく、僅かな浮遊感を感じながら…。
壁を背にして寄りかかり、ネクタイの結び目を少し緩めた、その時。
25階で停止した。
何人乗るのか分からないためため隅へと移動し、視線が合わないように顔を伏せると。
「おいっ、待てってッ!!」
「離してっ、触らないでよっ」
開いたドアの前で声を荒らげながら男女が言い争っている。
「このまま帰れると思ってんのかっ?!」
「アンタ、どうかしてんじゃないのッ?!」
男に腕を掴まれている女性は必死に抵抗しようとドアに手を掛けた。
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