イケメン検事の一途な愛
彼女は身振り手振りで説明してくれた。
今と同じで肩ほどの髪の長さだったのが、腰ほどにまで伸びたらしい。
しかも、スラム街のような治安の悪い場所で辛うじて生きていられたと。
心が抉られる。
彼女がそんな大変な時に。
俺は中学、高校と青春時代を送っていたかと思うと。
その後も苦労は続き、娼婦として売られそうになっただの。
1週間も食べ物にありつけず、畑から野菜を盗んで飢えを凌いだとか。
「話を整理すると、ご両親が刺された現場を目撃した上、犯人による自宅への放火も目撃し。更には意識喪失状態で拉致され、拘束が解かれた時にはベトナムにいた」
「ん」
「その後、数年放浪したのちに人身売買をする連中に連れ去られ、売られる前に逃げ出し、その時に今の事務所の社長に助けて貰った……で合ってるか?」
「ん、あってッ……」
健気に話す彼女を抱き締めていた。
言葉ではとても言い表せなくて。
想像はしていた。
どんな生活をしてるのかと。
それでも、悪い方には考えたくなくて。
でも……。
知らないで受け入れるのと、知った上で受け入れるのは違うと思うから。
聞いてはいけないと分かってる。
だけど、『彼氏』としてではなく、『検事』として聞かなければならないことが……。
どんな人生を歩んで来たとしても彼女は彼女。
全てを受け入れる覚悟は出来ている。
尊厳を失わず、核心を得る言葉だなんてないのは分かってる。
被害者に質問するのは慣れてるのに……。
「『検事』として尋ねる。俺の知らない15年の間に、辱め的なことや慰み者にされたことはあるか?」
「………」