イケメン検事の一途な愛
「どうしたら許してくれるの?」
「別に怒ってないよ」
「ん、分かってる」
彼は体勢を変えようとしない。
私が爆弾発言投下したから当然カチンと来たんだろうけど。
それでも、仕事に関して口出すような人じゃないはず。
こんな風に態度に示すってことは、少なからず嫉妬してくれてるんだろうけど。
私が彼を試すような真似をしたことが彼のプライドを傷つけたのかもしれない。
『検事』という立場上、常に優位な物言いをすることに慣れてるし。
7センチ。
彼の鼻と私の鼻が触れる距離。
くっきり二重。
ワックスで程よく固められた髪。
私が映るセクシーな瞳。
手入れの行き届いた綺麗な肌。
見惚れてしまうほどのイイ男が目の前で私を誘惑する。
「キス、……したら許してくれる?」
「フッ」
「ダメ?」
「仕事で嫌になるほどキスしてるんだろ?」
「フリだって多いよ」
「へぇ~」
「ホントだよ?」
「ふぅ~ん」
「じゃあ、女優としてじゃないなら許してくれるでしょ?」
「女優としてじゃない……?」
「ん、……榊 美雨として」
「………やってみっンッ」
挑発には挑発で応えるのがラブコメの王道よ。
嫉妬には嫉妬だし、喧嘩には喧嘩で応えないと。
挑発的な視線を向ける彼が口を開いた、その時。
私は唇を重ねた。
それも、ドラマや映画ではしないような濃厚なキスを。
車内に艶めかしいリップ音を響かせ。
容赦なく求めるように軽く吸われ。
余裕を見せるかのように甘噛みされる。
そして、『愛してる』と伝わる吐息が……。
「上出来。今日の所はこれくらいにしてやる」
「っ……」
離れがたい唇を無意識に捉えると、チュッと愛らしい合格印が押された。