イケメン検事の一途な愛
「はい?今抱えてる案件で要請するような被疑者がいましたっけ?」
「いや、今時点ではいないんだが、今後のために書類だけでも手元に欲しくて」
「……分かりました、そういう事なら手配しておきます」
「悪いな、頼む。その代わり、今日中にと頼んでおいた明後日の公判廷に使う調書は明日の午前中まででいいから」
「本当ですか?!」
「ん」
「助かります!!」
終わりの見えない仕事を一つ一つ丁寧にこなす。
同時進行で幾つもの案件を抱えているため、時に徹夜になることもある。
けれど、それらはそれほど苦ではない。
『仕事』だと割り切っているからで。
法令に則って、出来る限りの処理をするだけ。
俺は仕事とは別に、既に水面下で動いていた。
ーーーーそう、あの事件を。
旅行から戻った際に、彼女は養父である事務所社長と話をするといい、事務所まで送り届けた。
勿論、俺のマンションに戻ることなく。
それ以来、彼女とは会っていない。
過密スケジュールなのに1週間も休んだのだから仕方ないと言えばそうなのだけれど。
調整した仕事をこなすだけでも忙しいのに、マスコミに追われて連日テレビやラジオで彼女の話題を聞かない日はない。
だから、俺から連絡したら申し訳ない気がして。
メールをするのも気が引ける。
ただ彼女からの連絡を待っているなんてダサすぎる。
『検察官』なのだから、俺にだって出来ることはある。
今すぐに解決出来ないとしても、少しくらいは役に立ちたい……そう思って。
19時半過ぎに仕事を切り上げ、庁舎を出た。