イケメン検事の一途な愛
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「その後、お母さんの調子はどうだ?」
「お陰様ですっかり良くなりました」
「それは良かった」
「本当に有難うございました」
とある居酒屋で高校の1学年後輩の杉田雄二と酒を酌み交わす。
1年前に杉田の母親がステージ4の肺癌と診断され、複数の病院で診て貰ったが診断は変わらず。
胸部外科医として有名な義兄に執刀して貰いたくて、俺の元に連絡を寄こして来た。
その時の『一願一礼』のルールを今使用しようと思って呼び出した。
「杉田に頼みがあるんだが」
「……はい、自分に出来ることであれば何なりと」
杉田は父親が立ち上げたNPO法人の代表をしている。
東南アジアを中心に中央アジアに至るまでの地域の発展途上国の支援をしていて。
特に貧困地域の就労に注力しており、その地域の情報にも精通している。
美雨の両親を刺殺した犯人を探すため、現地の情報が欲しい。
今現在、犯人が誰なのかも分からないから、検挙(被疑者を特定し捜査すること)すら出来ない。
まずは有力な情報を集めてから、今後の方向性を決めたいと考えている。
杉田に当時の様子と被害者である彼女の話を総括して説明した。
勿論、美雨が『来栖 湊』だという事は伏せて。
すぐさま情報収集をしてくれることになった。
その他にも、美雨の父親が勤務していた会社の取引先の情報や当時の会社の状況など。
どんな些細なことでもいいから、点を線に変えられるくらいの情報があれば。
何年かかってでも、俺に出来ることならしてやりたいから。