イケメン検事の一途な愛


その日のうちに映画を降板することになった。
撮影開始まで、まだ3カ月ほどあるからギリギリ変更も出来るはず。
共演者には申し訳ないけど、他人を気遣う余裕はない。

「お疲れさまでした~」
「お疲れ様です。お先に失礼します」

一日中撮影して、終わったのが20時少し前。
疲れたしお腹は空いたし、殆ど睡眠取れて無いから睡魔に襲われる。

「ジャケット出してくれた?」
「はい、出しました!明日の午後に仕上がるそうです」
「ありがと~」

クリーニングから戻るのが午後か。
あぁ~~、どうしよう。

「御礼をするなら、食事と小物類、どっちが妥当?」
「ん~、仕事柄から言うとネクタイとかの方が使い易いでしょうけど、好みが…」
「だよね」

社交辞令で物を贈ることはよくある。
けれど、所詮は仕事仲間に対してだから……。

殆ど面識がなく、しかも恩人に対しての御礼で、トドメはイケメン検事と来た。
何も考えずに、職場に宅急便でジャケットとネクタイでも送れば簡単なんだけど。

『恩人』というキーワードが。
とりあえず、電話してみて空いてる時間があるか聞いてからにするか。


*****

翌日(日曜日)の18時45分。
待ち合わせの料亭に15分前に到着したのにも関わらず、個室に通されたら既に彼がいた。

「こんばんは」
「……お待たせしてすみません」
「ん?15分前だけど?」

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