イケメン検事の一途な愛

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彼女のマネージャーから連絡を貰い、甘いものが好物だから、何か差し入れして欲しいと。
そのついでに自宅まで送り届ける任務を賜った。

甘いものと言われても。
何時に終わるのかすら分からないから、とりあえず飲み物より食べ物の方が妥当かと思い、無難にチョコレートにしてみた。
自宅のリビングテーブルの上に置かれていた雑誌のスイーツ特集ページが折られていた、そのチョコレートを。
教えて貰った撮影現場に到着すると、マネージャーが外で待機していた。
そして、彼女の居場所を教わり、会いに行くと。

疲れ切った表情の彼女がいた。
3週間ぶりに見た彼女は少し瘦せて見えた。

ちょっと揶揄うつもりでチョコレートを1つ食べた途端。
彼女の瞳から大粒の涙がポロポロと溢れ、まさか泣くとは思ってもみなくて。
泣かせてしまった後悔が一気に押し寄せて来た。

抱き寄せても泣き止まず。
謝っても涙は止まらず。
どうしていいものか、途方に暮れた。

ドレス姿があまりも綺麗で。
泣き顔ですら魅力的で。
このままずっと俺だけに見せて欲しいおかしな衝動に駆られつつも、どうにか収拾しないとと思考を巡らせる。

仕方なく、2つ目のチョコレートを口に入れ、彼女を抱き寄せた。

指先で涙を拭い。
乱れた前髪をそっと流す。
そして、嗚咽に似た声が漏れ出る口元を覆う。

口腔内の温度で少し蕩けだしたチョコレートを、彼女の唇を割って口移しする。
涙で視界が完全に塞がっている彼女は突然の出来事に驚いた様子で。

優しく後頭部を支え、もう片方の手は首筋に添えて。
次第にもぐもぐと咀嚼した彼女の涙はぴたりと止まった。

冗談抜きで、本当に大好物なんだな。

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