イケメン検事の一途な愛
到着したのは、郊外の聖苑。
既に19時を回っていて、聖苑内は少しひんやりと感じるほど、静寂に包まれている。
彼女に花束を持たせ、俺は彼女の手を取り、とある場所へと向かう。
「美雨のご両親はここにいるよ」
「え」
ご両親の涙なのか、急にぽつりぽつりと雨が降り出した。
俺は手を合わせて彼女の両親に挨拶をする。
彼女と会わなかったこの3週間。
俺の自宅に彼女が置いて行った歯ブラシやヘアブラシからDNAを採取し、彼女の両親のDNAデータと照合させ親子関係を証明させた。
その証明書を使用し、彼女の両親の身元引受人である親戚の人と連絡を取り、これまでの経緯を説明した上で遺骨のある場所を教わっていた。
それと……。
「話は終わったか?」
「うん」
墓前で手を合わせていた彼女が立ち上がったのを見計らって、ジャケットの内ポケットからとあるものを取り出す。
「手」
「ん?」
不思議そうに俺の指先を見つめる彼女。
そんな彼女の手のひらに、光り輝くものをそっと乗せる。
「ご両親の結婚指輪だ」
「えっ?」
「放火されてご遺体は損傷が酷かったらしいが、純プラチナのこの指輪は火事でも残った唯一の物だったそうだ」
プラチナの熔解温度は1770度。
火事で燃える温度は高くても1200度。
だから、プラチナの指輪が熔けることなく残ったということ。
彼女は涙目でそれらを大事そうに見つめた。
「ありがとう。……形見の品が欲しかったから本当に嬉しい」
「ん」
ご両親が眠る墓石に一礼して……。
「また来ます」
「次来る時は、2人の好物持って来るからね!」