イケメン検事の一途な愛
車内に戻った俺ら。
彼女は花束が両親へのものだと知り、俺に抱きついて来た。
「花束も、……ありがとう」
「どう致しまして」
「もうっ、カッコ良すぎるって」
「フッ、今頃気付いたのかよ」
納骨されている聖苑。
両親の形見の結婚指輪。
そして、再会を知らせる花束。
どれも彼女には必要なものだから。
「腹減った。何食べたい?」
「柾くんの好きなものっ!」
「ッ?!」
15年ぶりに聞いた彼女からの『柾くん』という響き。
たかが名前を呼ばれただけなのに、その威力は計り知れない。
薄暗い車内で助かった。
今の俺、めっちゃ顔が赤面してるって。
カーナビの液晶が微かに顔を照らすから、恥ずかしくて……
「俺の好きなもの聞いたら、後悔するぞ?」
「え?……激辛好きなの?私、甘党だよ?」
知ってる。
つい1時間前に実感したばかりだから。
急に不安そうになった彼女の後ろ首を支え、耳元に囁く。
「一番の好物は、み・う……だから」
「ッ!!」
俺の言葉に驚愕して固まる彼女の額に口づけし、車を発進させた。
*****
「フフッ」
「何~?」
「いや、美雨がいっぱいいるから、目の保養になるな、この部屋」
「あっ……」
どこかで食べて帰ろうかと思ったが、また誰かに撮られたら厄介だということになり、彼女の家でデリバリーを取ることになった。
初めて訪れた彼女の部屋。
当然俺のマンションより広い間取りなのだが、女性らしいインテリアの装飾よりも目を惹いたのが彼女のパネルの数々。
個展が開けそうなほど飾られているそれらは、どれも綺麗で。
360度から見られているような、贅沢な空間。