イケメン検事の一途な愛
山ちゃんが社長と対策を話し合ってる間に、私は奴へ電話する。
「もしもし?」
「早朝からラブコールとは嬉しいね」
「何の真似?」
今までなら『あとで訂正しといてよね』で終わる電話が、今日は異質な温度差がある。
「怒ってるってことは、あの内容は本当なんだ、へぇ~」
「どういうつもりなの?」
「どういう……う~ん、どうしようかなぁ」
志田の言い方にイラっとする。
『ベトナムで食べるものに困って野生児みたいに素潜り生活』
まるで、私がホームレス生活していたと言わんばかりの中傷した内容だ。
「名誉棄損で訴えるわよ?」
「いいの?」
「どういう意味?」
「ご両親のこと、バラしてもいいの?」
「え?」
「放火されて亡くなったんでしょ?」
「っ……、何でそれを?」
どうしてそんなことまで知ってるの?
控室で話したのは、もりで突かれた話だけ。
両親が放火で亡くなったのは、確か……聖苑での話。
ということは、………私たちの後を尾行したってことだ。
これまで、プライベートなことは一切公表して来なかった。
それは養父である社長の配慮でもあるが、孤児の状態の私を受け入れ、女優としてカメラの前に立たせるために。
だから、こんな風にして過去をバラされたことで、『来栖 湊の隠されたベールのその先は…』みたいに書かれてしまったら、スキャンダルで炎上するより深刻だ。
動揺する私に彼がトドメを刺して来た。
「暫くの間、彼女だってことに」
「………」
これまでスキャンダルは数えきれないほど取り上げられてきたけど、熱愛報道を認めたことは一度もない。
だって、本当に付き合ってないから、否定するのが当然で。
なのに………。
『幼い頃のプライベートを話せる仲』って。