イケメン検事の一途な愛


腕時計を見せながら気遣う彼。
プロだ。
完全に女性慣れしている。
さりげない仕草がいちいちカッコ良すぎるのが、なんか腹立つ。

「ジャケット有難うございました」
「どう致しまして」
「それと、これ。ほんの気持ちです」
「あ、そーいうのホントいいのに…。なんか返って申し訳ない」
「いえ、本当に助かりました」

あまりあの日に関して深掘りしたくない。
けど、御礼はちゃんと言わないとならないし。

「今日も水玉柄なんだね」
「へ?……あ、はい。好きなんです、水玉」
「へぇ~」
「そういう久我さんも水玉ですよ」
「フッ。………だな」

濃紺に薄水色の水玉柄のネクタイの彼。
そう言えば、あの日も水玉柄だったような……?

「もしかして、水玉好きですか?」
「………ん」

はにかむ表情が意外で、なんか可愛い。
自然とお互いに水玉柄が視界に入って笑みが零れる。

「義兄妹の杯でも交わします?」
「は?………あぁ、………ん」

ありきたりなジョーク。
けど、殆ど初対面の人と食事をするのに何かきっかけが欲しかった。

ビールをグラスに注ぎ、乾杯する。
自然と和やかな空気に包まれた。

「1つ、質問していい?」
「はい」
「もしかしなくても、……女優の来栖 湊さん、……だよね?」
「フフッ、今頃?」
「あ、やっぱりそうなんだ。悪い、あまりテレビとか観ないから」
「そうなんですね。お仕事お忙しいですもんね」

なんか緊張して損した気分。
もっと刺々しい人かと思ってたけど、そうでもないみたい。

< 12 / 142 >

この作品をシェア

pagetop