イケメン検事の一途な愛


ゴシップだと言い切る彼女を疑っているわけじゃない。
むしろ、すぐに知らせてくれたくらいだから、彼女に信頼されているとさえ感じる。

俺が気になるのは、そんな事じゃない。
彼女との会話を全て聞かれたという事は、俺と彼女の関係を完全に知っているという事だ。

抱き締めたり、キスしたことも知られたことになる。

恐らく、彼女はベトナムでの出来事や両親のことで頭がいっぱいだと思う。
元々熱愛報道が出ても動じるタイプではないし。
だから、きっとその件に関しては気にも留めてないはず。

現役検事の視点からすると、見えない部分の方が重要だと認識してる。
さて、どうしたものか。

*****

「大丈夫か?」
「ん……何とかね」

彼女に呼ばれ、仕事終わりにマンションを訪れている。
彼女は疲れた表情でスーツケースに荷物を詰めていた。

「どこ行くの?」
「釜山」
「撮影?」
「授賞式」
「授賞式?何か、賞取ったの?」
「……ん」
「おめでとう!」
「ちっともめでたくない」
「え?」
「奴もいっしょだから」
「………あ」

彼女が言う『奴』とは志田淳平のこと。
これまでもそいつと彼女とのゴシップは何度か出てるが、今回は内容が内容なだけに彼女の身が心配になる。

「そいつが付き合ってることにしろって?それとも、俺と別れてそいつと付き合うとか?」
「まさか!あんなクズ野郎と付き合うくらいなら一生独身の方がマシだって」
「俺がいるのに?」
「あ、いや、だから……。奴と付き合うくらいならって話で」
「分かってるって」
「暫く、奴と付き合ってることにしないとならなそう」
「………そっか」
「ごめんね?」

荷物整理をしている手を止め、彼女は俺の顔を覗き込んで来た。

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