イケメン検事の一途な愛

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今日は待ちに待った、彼女のクランクアップの日。
撮影は夜まで続くと聞いていたので、仕事を早めに終わらせ支度を準備し、撮影現場へと向かった。

事前にマネージャーの山本さんから教わった場所に車を停め、今か今かと待っていると『今着替えも終わり、これから駐車場に向かいます』との連絡が入る。

俺は花束を手にして車を降り、ドアにもたれるようにして彼女が来るのを待っていると、彼女はマネージャーと共に楽しそうに話をしながら歩いて来た。

そして、俺を見つけるなり走り出して……。

「っ……」
「どうしたの?!」

相変わらず、周りの視線をあまり気にしない彼女は、豪快に俺に抱きついて来た。

「クランクアップお疲れ様~」
「ありがとうっ!」

本来ならこの後に打ち上げと称した飲み会があるらしいが、明日から5日間の旅行が控えている為、彼女は打ち上げを欠席することになっている。
そんな彼女を自宅へと送り届ける任務を賜った俺は、彼女を迎えに来た。

「久我さん、みーなこと、宜しくお願いしますね」
「はい」
「みーな、お土産忘れないでね?」
「分かってるって」
「それじゃあ、お先に失礼します」
「お疲れ様でした。お気をつけて…」

マネージャーの山本さんは俺らに気を遣って、その場を後にした。

「ん」
「私に?」
「他に誰がいるの?」
「わぁ~ありがとっ!」

手にしていた花束を手渡し、喜ぶ彼女の髪を撫でる。

「行きたい場所があるんだが、いいか?」
「うん、勿論」

撮影で疲れているだろうに、彼女はそんな素振りも見せず、にこっと屈託のない笑顔を見せる。

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