イケメン検事の一途な愛
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訪れたのは、俺と彼女の思い出の場所。
「今なら最終のに間に合うから観るか?」
「うん、観たぁ~いっ!」
「そうと決まれば、ダーッシュ!」
「ラジャ~~ッ!!」
まるで子供の頃に戻ったかのように手を繋いでチケット売り場へ向かった。
最終が19時開演。
ギリギリそれに間に合った俺らは、二人掛けのソファーに腰を下ろし、星空を見上げた。
幻想的な星空に合うようにBGMの音楽も壮大な曲が選曲されていて。
彼女と並んで星空を見上げたことはあったが、こうして肩を抱き寄せ観賞したのは初めてで。
見慣れた景色のはずなのに、特別な空間のように感じられた。
閉演を知らせるアナウンスと共に次々と出口へと向かう人々。
そんな人々を少しの間見送り、最後にゆっくりと建物を出た。
最終公演というのもあってか、外に出ると殆ど人気がなくなっていた。
「ここで再会したのがつい昨日に思える」
「………ん」
美雨はライトアップされた屋上の天体ドームを眺め、嬉しそうに微笑む。
俺はそんな彼女の横顔をじーっと見つめて。
建物の前にある階段。
たった8段しかないそれは、俺と彼女の思い出の場所。
『ま・だ・か・な?』と階段を行ったり来たり。
階段の隅に腰かけ、彼女が来るのを待ったり。
そして、再会したあの日もここで……。
思い出に浸っているのか、天体ドームに見惚れているのか。
彼女は静かに夜空を見上げている。
俺は数段降りた場所から、彼女をじっと見つめて……。
「美雨」
「……ん?」
俺の声に振り向いた彼女。
すぐ横にいたはずの俺が、少し離れた場所にいることにちょっぴり驚いたようだ。