イケメン検事の一途な愛

*****

「ねぇ、あの人、みーなじゃない?」
「えっ、どこどこ?」
「ほら、自動手荷物預け機の所にいるドット柄のワンピースの人」
「……あっ、そうかも」
「一緒にいる人、彼氏かな?凄いイケメンだよっ」

黒地に白い小さいドット柄のワンピース姿の美雨。
マキシ丈のスカート部分はアシンメトリーになっていて、尚且つ切り替え部分がレースになっているというかなりハイセンスのシフォンワンピ。
襟部分にふんわりとリボンが結ばれ、ウエスト部分には可愛らしさを引き締める効果のある黒いベルトが。
サングラスをしていても一般人とは違うオーラが漂い、『THE・芸能人』と言って歩いてるようなもの。

今までなら足早に立ち去る所だが、もう俺らは逃げも隠れもしない。
手荷物引換証を受け取り、保安検査場へと。

他人の視線に慣れない俺は少々緊張気味だが、俺の手を握る彼女が終始話し掛けてくれているお陰で、だいぶ気が紛れている。

どこにいても『みーな』という言葉が聞こえて来る。
さすが、トップ女優。
どこにいても注目の的らしい。

「なぁ、美雨」
「ん?」
「俺ら、旅行から帰って来たらこんな風にまったり珈琲飲めるかな」
「うん、大丈夫だよ」
「何で言い切れんの?」
「フフフフフッ」
「何、その不敵な笑みは」

ラウンジでゆったりと珈琲を味わっているが、こんな風に堂々と見せつけてたら、帰国後に報道陣に囲まれそうで。
けれど、彼女は何か思い当たる節があるのか、にやりと笑みを浮かべた。

「うちらが出国した頃に、事務所から婚約したという公式発表出ることになってるから」
「はっ?」
「もう逃げれないわよ~?」
「フッ、逃げるかよっ」

彼女は俺のジャケットの襟部分を掴んで引き寄せ、人目があるにも関わらず、俺の唇を奪った。
チュッと愛らしい音を奏でて……

~Fin~

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