イケメン検事の一途な愛
週末が近づくと電話の電源を落としたくなる。
30歳目前で、親からの結婚催促が急加速して来た。
別にどこかの令嬢との縁談を……みたいな堅苦しい家柄ではないが、早く落ち着かせたいようで頻繁に見合い話を持ち掛けてくる。
だが、俺の心にはずっと住んでいる住人がいる。
忘れたくても忘れられず。
諦めようとしても諦めきれない人が。
だから、その人にもう一度会うまでは、次の恋はしないと決めている。
例え、実らなくとも……。
納得した上で次のステップに進むために。
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久我検事に謝罪のメールを入れ、ドラマの台本に目を通していると、深夜にも関わらずメールを受信。
マネージャーか事務所スタッフからの連絡かと思いきや、送り主は『久我検事』とある。
すぐさまメールを開いて確認すると、動画サイトの件は処理したと。
大手芸能事務所でも四苦八苦する案件なのに、一体どうやったら小一時間ほどで削除することが出来たの?
検事だから?
何か裏の手でも使ったのだろうか?
だとすると、返ってますます迷惑をかけてしまったことになる。
深夜3時半過ぎ。
もう少ししたら、薄っすらと空が明るくなるような時間帯に『どうやって?』なんて聞けるはずもなく。
胸がざわつくのに解決する方法すらなく、ただ時間が経つのを待つしかない。
寝ないといけないのに、とても寝れるような心境でもなく。
かといって、台本を手にしてもセリフが頭に入らない。
ソファに横たわり、呆然と天井を見つめて……。