イケメン検事の一途な愛
蘇った記憶とその対価
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「何飲む?」
「何でも大丈夫です」
「アルコールでも?」
「………あ」
「フッ、冗談だよ」
夕食を食べ終え、冷蔵庫から飲み物を幾つか取り出す。
「どれがいい?」
「う~ん、じゃあ、これで」
数本手にしている俺の手からミネラルウォーターを取った彼女。
テーブルの上の空き容器を片付けている。
「質問していい?」
「遠慮なくどうぞ」
可燃ごみとプラスチックごみを分ける所を見ると、生活力はあるらしい。
「女優を目指したきっかけは?」
「…………」
「ごめん、聞いちゃまずかった?」
「あ、いえ……」
片付ける手が急に止まった。
しかも、表情まで一瞬で暗くなり、触れてはいけないものに触れてしまった感じがした。
「私、孤児なんです」
「え?」
「養護施設で育ったんですけど、昔の記憶が無くて。両親の記憶も勿論なくて……。生き別れたのか、死別したのかすら分からなくて。もし消息が分かるならと淡い期待を。こういう仕事してたら、どこかで私のことを見ててくれるんじゃないかと思って」
「ごめん。………なんか傷を抉るような質問してすまない」
「いえ、大丈夫です。これが現実ですし、別に悪いことをしてる訳ではないから引け目も感じてませんし」
「偉いな」
涙目の彼女の頭を優しく撫でる。
女優を夢に頑張ってるのかと思っていた。
そのきっかけが、オーディションなのかスカウトなのか。
はたまた幼い頃から演じることが好きなのかと思ったけれど。
予想もしない返答に俺自身が心を抉られてしまった。