イケメン検事の一途な愛

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「はぁ…」

何とか無事に帰宅した私(来栖 湊)は、力尽きるようにソファに倒れこんだ。

久しぶりの休日でのんびり過ごしていた所、急遽、映画の協賛会社の社長との会食が入り、仕方なく某ホテルに出向いたのが19時。
監督や脚本家も同席しての会食はおよそ2時間半ほど続き、その後にノベルティ用の打ち合わせをしたいというので別室に移動した。
けれど、それが間違いだった。

連れていかれた場所はミーティングルームではなく、宿泊用の客室。
北欧風に誂えられた室内。
ダウンライト越しに見える夜景はうっとりしてしまうほど魅力的だが、同じ室内にそんな雰囲気を帳消しにしてしまうほどの気持ち悪い視線を向ける人物が1人。

30代半ばといったところだろうか?
カチッと固められたヘアスタイル。
高級腕時計が嫌味に輝き、むせ返るほどの香水の匂いを纏う協賛会社の社長。

部屋に入るや否やネクタイを緩め、ワインボトルを傾け、注いだワインを飲めと言わんばかりにグラスを差し出した。

「早朝からCM撮影が入っているので、お酒は控えさせて下さい」

当たり障りのない言い訳を連ねて、男との距離を保つ。
個室に二人きりとあって、男は上機嫌のようだ。
会食の際にすでにビールを数杯飲んでたはずだが、注いだワインを一気に飲み干した。

枕営業する女優もいるらしいが、私は違う。
そこまでして仕事がしたいだなんて思ったことは一度もない。
色んな役どころに挑戦して来たが、常に真剣勝負で勝ち取って来た。

「打ち合わせが無いのでしたら、そろそろ失礼させて頂きます」

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