イケメン検事の一途な愛

振り向け~振り向け~こっちを見ろ~~。

念を込めて視線をロックする。
すると、俯き加減でこちらへと歩き出した。

無意識に傘で顔を隠してしまった。
いい歳して緊張って……。
マジで恥ずかし過ぎて顔が上げられない。

足下に視線を固定して、呼吸を整えていると。
視界に女性の靴を捉えた。

ゆっくりと視線を持ち上げた、次の瞬間。

「ふぇっ?!」

思わず間の抜けた声が漏れ出た。

「久我さん?」
「………湊?」

目の前にいたのは来栖 湊だった。

「何故、ここに?」
「昔、来たことがあって」
「………そうなんだ」

記憶を思い出したと言っていたから、思い出の場所を訪れたのだろう。
意外な場所で偶然にも行き会ったから、なんか拍子抜けしてしまった。

「久我さんこそ、どうしてここに?もしかして、デートの待ち合わせとか?」

確かに。
その昔、デートの待ち合わせにした場所ではあるが……。

「実家がこの近くなんで、昔よくここに来てて」
「そうなんですね。なんか奇遇ですね」
「夕飯は?」
「………まだです」
「じゃあ、食べて帰るか」
「ノーメイクですけど、大丈夫ですかね?」
「だから、いいんじゃね?」
「あ、……ですね」

肩を並べてゆっくり歩きながら、美味しそうな店を吟味して……。

「あそこのお店、美味しいんですよ」
「あ、うん。……知ってる」

彼女の両親に連れられ、よくご馳走になった店だ。

「昔、両親と一緒に大好きだった男の子と食べに来たんですよね~」
「…………え?」

今何て?
俺の聞き間違いだと思うけど、なんかデジャヴのような……。

「美雨………ちゃん?」

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