イケメン検事の一途な愛
地下鉄で帰宅してもすぐ着く距離だが、大勢多数いる所に彼女を連れて行きたくなくて。
駅ではなく、空車のタクシーを捕まえ乗り込んだ。
「虎ノ門ヒルズ駅までお願いします」
彼女との時間は1分1秒でも逃したくない。
俺との時間を少しでも長く一緒にいて欲しくて。
15年待ち焦がれた初恋の子を目の前に、堰を切った感情は抑えられなくて。
隣に座る彼女をずーっと見つめていたいのに、完全にコントロール出来ない感情がバレるんじゃないかと見ることさえ出来ない。
「何食べたいですか?まだ食材が沢山あるから食べたい物を作りますよ?」
「っ……」
あぁ、なんて勿体ないことをしたんだ、俺は。
昨日も今朝も、彼女が食事を作ってくれたのに。
さほど味わって食べなかった……。
美味しい。
うん、確かに美味しかったけど。
彼女だと分かっていたら、もっと大事に味わったはずなのに。
色々な事が走馬灯のように思い出す。
ん?
あっ!!
アイツだ、アイツ!!
初めて彼女とエレベーターで会った時。
奴は彼女を強姦したな。
未遂だったんだろうが、そんなことどうでもいい。
俺の大切な彼女にいかがわしい真似をしようとした時点でアウトだっての。
沸々と沸き起こるあの日の情景。
ブラウスを引きちぎったことでさえ到底許せないってのに、彼女の口紅は見事に崩れていた。
しかも、下着姿を見やがったし。
俺でさえ、まだ彼女とキスしたことないのに……。
苛々が治まりそうにない。
考えれば考えるほど、思考が斜めに暴走してゆく。
赤信号で停車した車内であまりにも緊張しすぎて視線を逸らす。
窓から見える大型スクリーンに、とある俳優と彼女がキスしてる映像が流れていた。