イケメン検事の一途な愛
自宅マンションに到着し、玄関ドアを開けて中に入る。
彼女は折りたたみ傘を玄関に置き、ショートブーツを脱ごうとシューズボックスに手をついた。
俺はその手を掴み、彼女の後頭部を支えコンクリートの壁に彼女を押し当てた。
そして、もう片方の手を壁につき、彼女を拘束する。
誰かに嫉妬するなんて今まで一度もなかった。
自身の感情がコントール不能になることだってなかったのに。
目の前にいる彼女のことになると、全てが制御不能になるらしい。
突然の俺の行動に驚いた彼女は、目を見開いて俺をじっと見つめる。
「俺のこと、覚えてる?」
こくりと頷く彼女は、ほんの少し頬を赤く染めはにかんだ。
「まだ全部を思い出したわけじゃないよね?」
再びこくりと頷いた彼女は申し訳なさそうに俯こうとする。
そんな彼女の顎をそっと掴み持ち上げる。
俺だけを見て欲しくて……。
ヤバい。
このまま彼女を見つめてたら、この場で押し倒しそうで怖い。
コントール不能になった今、彼女にこれ以上触れたら壊してしまいそうで。
それじゃあ、奴と一緒じゃねぇか。
あんなクズ野郎と一緒なんて冗談じゃねぇ。
暴走しそうな感情を寸での所で制御して彼女の耳元に近づこうとすると。
じっと見つめていた彼女の瞳はゆっくりと閉じられた。
まるで俺からのキスを待つかのように。
「そういうことを男の前で簡単にしちゃダメだよ」
この先彼女とは、15年の歳月を埋めるように時間をたっぷりと費やして満たしたい。
一時の感情で流されるのではなく。
「何か作って。……簡単なものでいいから」
「………はい」
「検視と現場検証して来たから、先にシャワーしてくる」
「あ、……はい」