イケメン検事の一途な愛
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大好きだったあの男の子が久我さんだと判明した。
顔や仕草とかは思い出したけど、名前は思い出せなくて。
けれど、学年で一番頭が良かったことと、よく咳き込んでた記憶は薄っすらとある。
まさか、こんな風に再会するとは思ってもみなくて。
失った過去が少しずつ埋まってゆく感覚が。
偶然にも助けられ、その後にまた偶然に出会い今度は私が助けて。
そして、また偶然にも……。
偶然が何度も起きたら、これって必然なのかな。
『運命』なんて大げさなものじゃなくても。
こうしてまた出会えたことに縁を感じる。
食事もせずに帰宅し、玄関先で壁ドンされた。
毎日のように彼に会うことが楽しかった日々を思い出す。
勉強を教えてくれる時はずっと厳しい顔をしてるのに、私が問題を解いてそれが正解だった時、彼の片眉がぴくりと上がり、強張っていた表情がふわっと崩れる瞬間。
口元が緩んで微笑む、あの瞬間が一番好きだった。
普段は無口で、他の同級生から揶揄われてたからいつも怯えてるような表情だったし。
だから、あんな風にふわっと柔らかい笑みを私だけが知ってるという事が特別で。
いつしか独り占めしてる優越感が嬉しくて。
自分にだけ見せる彼に惹かれてたから。
こうして目の前にあの時と同じように私だけを見ててくれる事が何よりも嬉しくて。
エレベーター前での出来事も病院を抜け出して押し掛けた時も。
彼の本当の優しさに触れていた。
何故、気づかなかったんだろう。
こんなにもあの時と変わらず優しさの塊のような人なのに。