イケメン検事の一途な愛


夕食を食べ終え、再び緊張が走る。

ダイニングテーブルを向かい合って座る構図はすっかり慣れてるはずなのに。
何だろう、この緊張感は……。

彼が淹れてくれた珈琲の湯気に隠れるようにカップを顔の前に。
そうでもしないと隠れれる場所がどこにもない。

じーーーーっと見つめる彼の視線。
無言のまま、微動だにせずに。

何か、話題を振らないと。
カップをテーブルに置き、意を決して口を開こうとした、その時。

「あのさ」
「っ……はい」
「前に聞かれて話したと思うけど」
「……はい」
「俺が検事になるきっかけの『とある事件の被害者』ってのは、……美雨、ちゃん?……の事だから」
「あ、……はい。………呼び捨てでいいですよ」
「え?あ、……ん」

昔は子供だったこともあって『美雨ちゃん』と呼ばれていた。
だけど、『湊』は呼び捨てなのに『美雨』になったら『美雨ちゃん』だなんて、ちょっと寂しい。

ずっと呼ばれなかった本名を好きだった人が呼んでくれるだけで十分幸せだ。
彼の存在が、押し潰されそうな重い過去と向き合うための原動力になる。

「この15年の間に何があったのか、……聞かせて貰えるかな?」
「…………はい」
「勿論無理にではなく、言いたくなった時に」
「……はい」
「他の誰でもなく、一番最初に……この俺に」
「…はい」
「それと」
「ん?」
「その敬語、壁を作られてるみたいで傷つく」
「え?」
「昔みたいに気軽に話して?」
「………はい、あ、……うん」

彼は真剣な表情を崩し、蕩けるような甘美な笑みを浮かべた。

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