イケメン検事の一途な愛
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大好きだった男の子が彼だと判明した翌日。
土曜日ということもあって、彼は朝からカジュアルな服でリビングのソファーに腰かけている。
居候の身だから、食器を片付け、洗濯を干し、掃除機で部屋の掃除をする。
そんな私をじーーーーっとずーーーーーっと見つめる彼。
『女優』という職業柄、人に見られることには慣れているはずなのに。
どうしてなの?
体中が静電気を帯びてるみたいで、どこにいても彼の視線を感じてしまう。
掃除機を片付け終え背伸びをした、その時。
背後から長い腕に包まれた。
「終わった?」
「………ん」
彼の吐息が頬にかかる。
不意打ちのバックハグは威力絶大で、一瞬で顔から湯気で出てるんじゃないかと。
「デートしよ」
「ふぇ?」
「デ、ー、ト☆」
妖美な声音で耳元を犯される。
ホントにやだ。
完全に乙女じゃない、これじゃ……。
何も反応出来ない自分がもどかしくて。
心の底まで見透かされていそうで。
恋愛経験値なのか、女性の扱い方スキルなのか分からないけど。
私だけが浮かれてるみたいで恥ずかしくて。
本来の負けず嫌いの自分が顔を覗かせる。
『女優』という二次元の経験値を駆使して、彼を振り向かせようと悪知恵が働いた。
そうよ。
その手があった。
ラブコメだろうが、ロマコメだろうが、ピュアラブだろうが……。
好感度1位を維持し続けて来たプライドがあるじゃない。
やれるだけのことはやってみよう。
初めて好きになった人だもん。
15年もの間、忘れずに覚えててくれた人だもん。
きっと届くはず。