イケメン検事の一途な愛
「どした?」
「お夕食の時間帯だから人気がないかと思って」
「……そっか」
お風呂上がりの彼女はフローラルのシャンプーの香りを纏い、ほんのり色づいた頬が愛らしくて。
変装用と思われる伊達眼鏡越しに上目遣いでウインクした。
美人なうえ、愛らしさと小悪魔的な仕草と……。
しかも、『浴衣』という俺のリクエストをしっかりと抑えている。
「お腹空いた」
「……ん」
「戻ろう?」
「…ん」
「ねぇ、聞いてる?」
「ん、聞こえてる」
上目遣いでおねだりするみたいな表情に見惚れてしまう。
あまりにも可愛くて。
彼女に限らず、ドラマや映画は誰が出ていようがほぼ観ない主義なんだが。
視聴率1位なのが分かる気がする。
こんな風にされたら一瞬で虜になるだろうな。
彼女は『早く~』と笑顔で俺の腕を引く。
参ったな。
彼女を虜にする計画なんてどうでもよくなる。
ますます彼女の虜になる自分がいた。
*****
「かんぱ~~い!」
「乾杯」
仕事以外での旅行は久しぶりだという彼女。
思いのほか楽しそうにグラスビールに口を付けた。
思い出した過去のことは整理がついたのだろうか?
来週から仕事に戻ると昨夜話していたが、大丈夫なんだろうか?
強がっているだけなのかもしれないが、お酒で気が紛れるなら少しくらいいいか。
「あまり飲み過ぎるなよ?」
「襲うつもり?下心があるでしょ」
「バレなきゃいいんじゃね?」
「えっ………フフフッ」
頬杖をついて美味しそうに食事をする彼女を見つめると、
「ん」
「……」
「はい、あ~ん」
お造りの刺身が俺の口元へと運ばれた。