イケメン検事の一途な愛
目の前を歩く彼女は夜空を見上げ、手を翳した。
そして、小首を傾げなら何やらしている。
暫くして歩くスピードを落とし、俺の目の前でピタリと止まった。
腕組したままの俺の前に立ちはだかるように背を向けて立つ彼女。
一体何がしたいのだろうか?と、思った次の瞬間。
翳した指をパチンッと鳴らし、俺の視線を彼女の指先にロックさせた。
そして、何かを掴んだみたいにぎゅっと握られた手。
その手はゆっくりと俺の目の前に。
「3・2・1」
スリーカウントした彼女は手をパッと広げて俺の視界を遮った。
何かのマジックなのだろうか?
思わず目を瞑った。
何かのサプライズ的な余興なのかも?と思いながら、気まずい雰囲気で歩くよりマシかと思って。
彼女から次のアクションが起こるのを静かに待っていると。
両肩に軽い重みを感じた、その次の瞬間。
頬に柔らかい感触を覚えた。
これって……。
急に早まる鼓動を感じながらゆっくりと目を開ける。
すると、恥ずかしそうに俺から離れる彼女が視界に映った。
「キャッ」
下駄で爪先立ちになって身長差20センチほどある男の頬にキスをした彼女はバランスを崩しふらついた。
そんな彼女の腰を瞬時に支えた。
浴衣の布地越しに感じる彼女の体温。
シャンプーのいい香りとアルコールの魅惑的な香りも相まって、鼓動が早まるのは必然で。
「あっ……」
「仕掛けて来たのは誰かな?」
「え?」
俺から離れようとする彼女の腰を更に抱き寄せた。
逃がすまいと……。