イケメン検事の一途な愛

*****

客室内の露天風呂に入って、身も心も洗われるようで。
彼が女優としての私を気遣って予約してくれた宿はオーベルジュの人気宿。
週末で予約するのも難しかっただろうに。

スキンケアを終え、気持ちを整える。
どうしよう。
男の人と二人きりでこういうラグジュアリーな所に旅行したことも宿泊したこともない。

勿論、仕事で演じる上で体験したことは何度もあるけれど。
プライベートでの経験値は完全にゼロ。

たった数日だけど、彼の家で過ごす時間と変わらないはずなのに。
景色が違うと気持ちの温度も全然違ってくる。

テラスに用意されたアルコール類。
中庭がライトアップされてて、幻想的な雰囲気が漂う。

室内も洗練されたデザインの家具と調度品が誂えある。
それと、十分すぎるほど広めのベッドも。

見ているだけでおかしな妄想をしてしまいそうで。
リアルな経験はなくても、必然的に知っているそれら。
沢山の恋愛ドラマや映画で演じて来たから。

本館って遠いのかな?
暗くなってるし、少し散歩でもしようかな。

豪華な夕食を勝手に先に食べるわけにもいかず。
1人部屋に籠ってると変な気分になりそうで。
部屋の鍵と携帯電話を手にして部屋を出た。

木々に囲まれた道はアプローチ状になっていて、本館へと続いているようだ。
夕食時だからなのか、ビラ周辺には殆ど人気がない。

ライトアップされた木々を眺めながら歩を進めた、その時。
視界の奥に長身のイケメンを発見。
彼は夜風を楽しむかのように腕組して目を瞑っていた。

そんな彼に下駄の音をさせずに静かに近づいて抱きついた。

< 92 / 142 >

この作品をシェア

pagetop