イケメン検事の一途な愛
切り取られた過去
「無防備すぎる」
俺の隣で静かに寝息を立てている彼女。
ダブルベッドが2台あるのに、彼女は俺のベッドで寝ている。
その寝顔があどけなくて。
自宅でも同じ屋根の下で夜を何日も過ごしたが、彼女とは毎日別の部屋で寝ていたし、初めて俺の家に来た時は熱に魘されていたから……。
こんなにも無防備な寝顔を見たのは初めてで。
彼女も緊張していたのか。
結構な量のアルコールを飲んでいたから、ぐっすりと寝ているようだ。
ずっと見ていたいが、見てると手を出してしまいそうだ。
気持ちよさそうに寝ている彼女を起こさぬように静かにベッドから出る。
「風呂でも入るか」
空が薄っすらと明るくなりつつある。
夜も幻想的だったが、水平線に太陽が覗き始める光景も夢想的で……。
藍色が少しずつオレンジ色に染まり始める瞬間を眺めながら、テラスの露天風呂に浸かる。
ジェットバス式になっていて、身も心も解されながら。
半身浴のような状態で浸かり、淵にもたれ掛かり目を閉じる。
鳥の囀りを耳にしながら、ロマンティックな雰囲気を味わっていると、微かに薔薇の香りが鼻腔を擽った。
「1人でずるい」
「おはよ」
俺を見下ろす形で彼女がしゃがみ込んでいた。
「日の出を堪能してるところ。一緒にどうだ?」
彼女は浴衣のおくみ部分を手で払い分け、淵に腰かけ足浴をしようと素足を湯船に入れた。
そんな彼女にそっと手を差し出す。
彼女はその手を何の躊躇いもなく掴んだ、次の瞬間。
「キャッ!」
「シッ」
俺は浴衣姿の彼女を湯船に引き寄せた。
「早朝から色仕掛けとは大胆な彼女だ」
「なっ……」