イケメン検事の一途な愛


拉致されたってわけか。
都内を探しても見つからなかったわけだ。

「目隠しを外されたというか、船から降ろされたのがベトナムの田舎町で」
「ストーーーーーーップ!!ちょっと待って待って待て待て。次のサービスエリアに車停めるから、それまで一旦中断で」
「……何で?」
「何でって……。運転しながら話聞いたらマジで事故る。俺にも、心の準備ってもんが必要なんだよ」
「……そっか」

そっか?
おいおいおい、他人事みたいな言い方じゃねぇか。
聞いてるこっちの怒りが沸点超えてどうにかなりそうだってのに。

確かに、拉致されたり、監禁されたり、暴行されたりと想像はしてたけど。
遺体が出てくるまではどこかで生きてると思っていたから。
例え、僅かな望みでも決して捨てはしなかった。

予想はしていたけども、実際に本人から聞くとなると話は別だ。
受け入れる側の準備ってもんが……。

5キロほど車を走らせ、サービスエリアに到着した。

「何飲む?何か買って来るけど」
「ん~、じゃあ、キャラメルラテみたいな甘いやつ」
「ホット?」
「どっちでも大丈夫」
「OK」

彼女を車に残して、自動販売機へと向かった。

*****

「甘くて美味しい~」
「それは良かった」

キャラメルラテは売り切れだったから、ショコララテにしてみたが、彼女は嬉しそうに口をつけた。

「で?さっきの話の続きだけど……」
「あ、……ん」

ブラック珈琲を飲み干し、気を落ち着かせた。

「覚えているのは、海に近い田舎町に捨てられて。で、そこがベトナムだってのが分かるまで数年かかったんだけど」
「ストップ」
「ん?」
「今、数年って言った?」
「うん」
「………」

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