離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 初めて聞く話に驚く純玲に父は続けた。

「伝統とか歴史だけにしがみついて、時代に合わせて変わっていこうとしなかったのがいけないんじゃいかな」

 父は社長に就任すると前社長の行っていた古い体質を変えようと経営をテコ入れし、ある程度までは立て直したが、社内の古い役員たちの反感を拭いきれず、改革半ばで弟に社長を譲ることになったという。

 弟は保身のために旧体制のやり方をしているらしく、社内の波風は立たないものの急激に変わる海外の情勢についていけていないらしい。
 だとすると、父には経営の才能があったのかもしれない。そう思っていると父と目が合う。

「お、純玲、その顔はお父さんを見直してるな。よしよし」
 父は満更でもない顔をしている。調子に乗りやすいところがやっぱりダンディではない。

「もう、お父さんたら」
 純玲は思わず笑い声をあげた。

「まあ、だから、苦境に陥っている会社の娘と政略目的で瑠美ちゃんと結婚したり、わざわざ婿養子に入ろうという男性はいないかもしれないわね」

「そうだったんだ……」

 瑠美や肇は現状を理解しているのだろうか。もう関係ないこととはいえ気にはなる。
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