離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

　泰雅はふたりに娘夫婦が円満だと見せつけるためにわざわざ迎えに来てくれるのだ。
　そう思いつつ、純玲は曖昧に笑った。

　しばらくすると店舗の方から「マスタぁ！いつまでも休憩してないでそろそろ戻ってください！」と声がかかり父は慌てて戻って行った。

　夕方、予定通り仕事を終えた泰雅が車で店まで迎えに来てくれたので、母の勧めでそのまま実家で夕食を頂くことにした。

　彼にパーティのことを説明すると『もちろん出席させてもらうよ』と快諾してくれた。


「純玲、これ、この前言ってた豆」

　食後寛いでいると、父が思い出したように純玲に持ってきたのは焙煎済みのコーヒー豆だった。

　社長はあまり酸味の強いものはお好きではないらしい。
　これは前社長に淹れたら美味しいと言って貰えたものに近い味の銘柄だ。微妙な違いを楽しんでもらえたら嬉しい。

「ありがとう！　たぶん社長に美味しく召し上がって貰えると思うわ」

　そういった途端、柔らかかった両親の表情が明らかに強張った。

「心配しなくても大丈夫よ。たしかに私も最初は巨大企業の社長の秘書なんて務まるか不安だったけど、今では立派にやってるから」