離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 きっと、両親は純玲に社長秘書が務まるか心配してくれているのだろう。
 実際はたいして立派ではないのだが、両親を安心させたくて純玲はすこし見栄を張る。

「最近は、社長と少し会話もできるようになってきたのよ。思ってたより怖くないかもしれない」

「百田社長と……お話するの?」

「う、うん。少しだけど」
 母に聞かれて見栄のレベルが低すぎることに気付き、慌てて誤魔化す。

「そうだ、甘いものもたまに召し上がるって伺ったから、今度コーヒーと一緒にお母さんの焼き菓子お勧めしてみようかな」
 
 マドレーヌがいいか、フィナンシェがいいか考えを巡らせる純玲に泰雅が声を掛ける。

「純玲、そろそろお暇しようか」

「え、もうこんな時間だったんですね」
 気づけば既に時刻は20時を回っていた。すぐに純玲は帰り支度をする。

「お父さんたちは明日も仕事なのに、長居してごめんね」

 謝る純玲に父は構わないよ、またおいでと言った後、泰雅に向き直る。

「白石先生、純玲をよろしく頼みます」

「はい、任せてください……安全運転で帰りますから。きっと純玲は助手席で寝てしまうと思いますけどね」
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