離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 形だけ“社長令嬢”として数年過ごした事はあったが、両親は普通の金銭感覚を純玲に身につけさせてくれていた。
 それに純玲が着飾ったりすると養子の癖に贅沢させて、と後から母が祖母に言われるのがとても嫌だったので、あまりかわいい服に興味がない振りをしていた。
 今では人並みにオシャレは好きだが、あんな高いドレスをポンと購入されると気後れしてしまう。

「でも……」

「君は普段家事を一生懸命してくれているだろう。しかも仕事と両立している。その対価と思って貰っていい」

「でも泰雅さんの方が忙しいですし、そのくらいのことはは当たり前です」

「純玲、夫婦のルールは当たり前とか、こうでなければいけないということはない。それぞれの家庭にあったやり方でいい」

 彼のお得意のパターンだ。こういう風に諭されるとうまく反論できなくなる。
 純玲は少しむくれた顔になる。

「……毎日泰雅さんより朝寝坊してもいいんですか?」

「全く問題ない」

 苦し紛れに反論したのに、真顔で返されて少し驚く。
 これでは寝坊した方がいいと思われているようじゃないかと思えるが、さすがにそれはないだろう。

「あ、そうだ、これ……泰雅さんに」
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