離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「……でも実の父が生きていたら、両親に迷惑を掛ける事もなかったのかなとは思います」

 その言葉に泰雅が反応する。

「ご両親は君を養子にしたことを後悔していると思っているのか?」

 後悔しているとは思っていない。彼らは自分を愛してくれている、でも。

「私のせいで小野寺の本家と険悪になってしまったんです……私は“疫病神”でしたから」

 自分のせいで祖父は亡くなり、会社の経営は傾いたと言われてきた。
 今なら事実でないのは理解しているが、幼い頃植え付けられた呪いのような罪悪感は未だに拭い去れない。
 実際、自分がいなければ父は祖母や叔父の協力を得ながら会社を経営し、今も社長でいれたのではないだろうか。

「君は疫病神なんかじゃない」

 はっきりした声音に泰雅を見ると彼は自分をじっとみていた。

「お義父さんもお義母さんも、俺から見てもすごく幸せそうだ。お義父さんは若い頃からやりたかった店が開けてよかったって言っているし、お義母さんも社長夫人なんてお断りってタイプの人だろう」

「……確かに、そうですが」

夫婦で喫茶店を切り盛りするふたりは本家にいた時よりはるかに生き生きとしている。
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