離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 彼を好きだという想いが一度に胸に押し寄せて、純玲は開いている方の手をギュッと握りしめ、喉から押し出すように声を発した。

「あ、あの……泰雅さん、私……」

「ん?」

 純玲が続きを言おうと息を吸い込んだ時、泰雅のズボンのポケットに入っていたスマートフォンが無遠慮に震えだす。
 思わず純玲はビクンと肩を揺らした。
 泰雅は顔を顰めるとごめん、と純玲の手を離し、立ち上がる。

「高梨、今日は休日のはずなんだが……ああ、その件か。なら構わない……なんだ、あたりまえだろう?」

 通話の相手は麗のようだ。話す泰雅の顔がフッと緩むのを見て純玲は我に返る。

(……私、今、何を……)

 溢れだす気持ちのまま、勢いに任せて彼に『好きです』と告白しようとしていた。

(困らせることしかできないに)

 彼にとって自分は契約上の妻でしかないのに、彼の優しさが自分だけに向けられていると勘違いしかけていた。

(泰雅さんは私を大切に思ってるって言ってくれたのに、私は一方的に自分の気持ちを押し付けようとしててた。自分勝手すぎる)
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