離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 我ながら最低な男だとは分かっている。
 でも、もう後悔はしたくない。一度失いかけたものを手に入れるチャンスが舞い込んだのだ。なりふり構わず囲って絶対に逃がすつもりはなかった。

 泰雅は翌日の朝、外堀を埋めるべく純玲が起きる前に彼女の実家に連絡を入れ、結婚の許しをもらいに赴いた。早朝の訪問に驚きつつも、純玲の両親は結婚について手放しで喜んでくれた。

 当初泰雅は、まずは彼らから結婚の許しをもらうだけのつもりでいた。
 後で改めて双方の親に挨拶し、その後具体的に結婚の話を進めればいいと。

 しかし、純玲の父がめずらしく深刻な顔をして切り出してきた話を聞き事情が変わり、本気で結婚を急ぐことにした。

 婚姻届けを携えてホテルに戻った泰雅は、純玲に冷静に考える時間を与えず、その場で判を押させた。
 完全によくある詐欺の手口だ。

 かくして純玲は泰雅の妻となった。

 当初泰雅は純玲が“妻”として自宅にいるだけで十分満たされていた。
 新しい生活や仕事に戸惑いながら、健気にどちらもこなそうとしている彼女を慮って、肌には触れずにいた。

 一度触ったら止まらなくなりそうな気がしていたから。
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