離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 急に自分の体が自分の物じゃなくなった感覚がして、不思議な気持ちになる。
 もっと動揺すると思ったが、事実がはっきりした今、逆に冷静に受け止めることができている。
 純玲はお腹に手を当てたまま、暫く気持ちを落ち着かせた。

「……なんて言おう」
 
 はからずして授かった命、お腹にいるという実感はまだ湧かないが、自然に嬉しいと思えた。
 ここにいるのなら産んで育てたい――何より愛する人の子供だから。

 でも、泰雅はどう思うだろう。円満離婚前提だから子供ができた時のことはもちろん取り決めていない。泰雅にとっても想定外のことだろう。

 彼のことだ、純玲を傷つけるような言動はとらないはずだ。産みたいと言ったら受け入れてくれると思う。
 その上で今後どうするかは冷静にかつ建設的に考えてくれる。

 でも、湧きあがる不安は理屈では消せない。ふたりの子供の存在を告げた時、彼が戸惑うだろうと思うと……辛い。

(手放しで喜んでもらいたいなんて、思っちゃいけないんだけど……)

 純玲はしばらくそのまま目を閉じ続けた。

 泰雅が帰宅したのは夜の10時を過ぎだった。これでも最近では早い方だ。

「お帰りなさい」

「ただいま、純玲」
< 164 / 248 >

この作品をシェア

pagetop