離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
(来週お医者さんで診てもらってはっきりしたら、泰雅さんにちゃんと言おう……ふたりの子供であることは間違いないんだから)

 純玲がじっとしていると、寝たと思ったのか、泰雅の身体が離れそっとベッドを降りた気配がした。そのまま寝室から出て行ったようだ。どうしたのだろうと、薄目をあけつつ純玲は耳をそばだてる。

 しばらくすると少し開いたドアの向こうで話し声が聞こえてきた。どうやら電話をしているようだ。
 会話の内容までははっきり聞こえないが、泰雅の声で相手だけは分かった。

「……そうか。あぁ、わかった……ありがとう、高梨」

(……また、麗先生だ)

 彼女とは共に担当する案件があるらしく、よく電話がかかってくる。
 睡眠時間を削ってまで話すことはないのに、と考えかけて止める。同じ事務所に勤める弁護士同士、ふたりにしかわかり得ない大事な仕事の話なのだろう。自分がとやかく言えるものではないのだ。

 彼女と話す時の泰雅の声が親し気で、優しく聞こえたとしても気にすることではない。
 純玲は布団をかぶり直し、もう一度しっかり目を閉じた。

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