離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 そんなことを考えている純玲の横で夫が溜息を吐いた。

「……君はちょっと着飾るだけで、美しさが際立つから男たちに注目されて困る」

「ちょっ、何を、注目されてるのは泰雅さんじゃないですか」

 真面目な顔で急に何を言い出すのかと慌てて否定する。

「君は自分のことになると途端に鈍感になるな。まあいい、ほら、美しい妻をエスコートさせてくれ」

 泰雅は片腕をスッと差し出してくる。純玲は頬を赤らめながら素直に手を掛けた。

「相変わらず仲がいいねぇ」

 振り向くと笑顔の父が立っていた。
 スーツ姿の父を見るのは久しぶりだ。母も品の良いツーピースを着て父の傍らに控えている。

「お父さん、お母さん」

「お義父さん、お義母さん、もういらしてたんですね」

「白石先生、純玲も今日はわざわざありがとう。せっかくだからしっかりおいしいものを食べて帰ったらいいよ」

 パーティは立食形式で、豪華な食事がずらりと並べられている。会場内の装飾も華やかだ。

「かなり豪華なパーティですね」

「ずいぶんお金掛けたんだなぁ。今こんなことにお金を掛けている余裕は会社に無いはずなのに。弟の見栄だろうな」
 
 泰雅の言葉に父はやれやれという顔をする。
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