離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 普段は明るく人のいい父が見たことの無いような顔をし、母と同時に頭を下げた。

「……お父さん、お母さん」

 軽蔑なんてしない。
 それは、この人たちが嘘偽りなく自分を愛して育ててくれたことを、身をもって知っているから。

 実母の葬儀の時、ふたりは自分を抱きしめ『大丈夫だからね』と言ってくれた。その温もりは今も忘れていない。

 実母は純玲の幸せを願い遺言を残し、両親が守ってくれていたのだ。
 それは全て純玲の為。行く末を案じ守る為だった。

「……私、最初、混乱してみんなに騙されていたのかもって思っちゃったの……でも本当は私を守ろうとしてくれてたんだよね……私を養子にしたせいでお父さんたちに迷惑、かけたのに」

 純玲は言葉を詰まらせる。

「純玲は僕たちを幸せにしてくれたんだよ。元々社長なんて向いてないお人良しの僕が若い頃からの夢だった喫茶店のマスターになる切っ掛けを与えてくれたのは君だ。君を虐める血縁者に愛想が付いたんだから」

「真紀に頼まれなくても、私たちはあなたを引き取ったわ……純玲、私たちを親にしてくれてありがとう」
 
 両親の言葉にとうとう涙がこらえきれなくなる。
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