離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「私も、お父さんとお母さんの子供になれて良かったって思ってる……ありがとう」

 ボロボロと泣く純玲の背中を母が優しく擦ってくれる。母の目にも涙が光っていた。

「親の想いはただ一つだよ、純玲」

 どんな形であれ、君自身が幸せだと感じる生き方を選んで欲しいと父は静かに言った。

 
 純玲は久しぶりに実家の自分の部屋で目覚めた。
 昨日は両親と話した後、なかなか寝付けなかった。

 下の階では物音がするので、既にふたりは起きているのだろう。

 父の話では、百田側の要求は純玲を百田雄一郎の実子として迎え入れたいということで、泰雅と結婚した今もそれは変わらないという。

 雄一郎は政略結婚し、息子が2人いるが、まだ成人していない。今になって純玲の利用価値を認識し、離婚させてから実子として迎え入れた後、政略結婚させるつもりなのかしれない。そのくらいのことは平気でやると両親は危惧していた。

 秘書として仕える最高権力者、そして血の繋がった“父”の冷徹な表情を思い浮かべる。
 客観的に見て全然似ている要素がないなと思う。

(突然秘書室に異動になったのは私がそれに相応しいか近くで見定める為だったのかな。でも、向こうから直接言ってこないのはなぜ?)
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