離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

「あなたならやりかねない。それだけの力を持っていますから。言う通りにしないとオノデラ貿易や彼女の両親の喫茶店を潰すと脅すことは造作もないはずだ」

「喫茶店は置いておいても小野寺の本家は彼女を疎んじていたと聞いている。恨むべき存在なのでは？」

「僕の妻は優しいんです」

　畳みかけるような両者の会話に口がはさめない。すると雄一郎の口調が少しだけ弱まる。

「脅す……そんなことはしないさ。それをしたら真紀にしたことと同じことになる」

　純玲は泰雅の横に進み出て、口を開いた。

「あの、私、さきほど神崎さんに事情を伺ったんです」

「……神崎、余計な事を」
　雄一郎は苦々しい顔になる。

「きっと社長はご自分では話されないと思いまして、簡単にですが、事実はお伝えしておきました」
　神崎は泰雅に向き直ると話し始めた。

「純玲さんのお母様の真紀さんと社長は短い期間だが、本当に愛し合っていた」

　それを引き裂いたのは雄一郎の母だった。百田家の為に雄一郎に政略結婚させようと思っていた母は真紀の存在を知ると、雄一郎には知らせないまま雄一郎の偽の代理人立て真紀に別れるように迫った。