離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 自分を心配そうに見る幼い女の子。震える手でそれを受け取る。 

「あ……りがとう」

 純玲は少しホッとしたような顔をした。
 すると「純玲ちゃん!」と焦った声を出しながら家政婦がこちらに駆け寄ろうとしていた。
 純玲は慌てて雄一郎から離れ、家政婦のもとに走っていった。

 俺が泣きそうな顔をしているのが分かったんだろう。性格まで母親にそっくりだな。彼女も人の痛みに敏感で、困った人にすぐに手を差し伸べられる女性だった。

 でも、もう永遠に失われてしまった。自分のせいだ。

 小さな純玲の後姿を見ながら、雄一郎は自分が彼女の父親になる資格はないと思った。

 お家騒動の渦中であったとはいえ、真紀が心変わりしたと思い込み、つまらないプライドを守るために彼女を追わなかったし探すことすらしなかった。
 自分の浅慮のせいで、彼女は職を失い、ひとりで純玲を生み苦労の末亡くなった。
 純玲の養父母が仇のように思うのも無理はない。

 そして、今純玲を百田家に引き取ることは、その仇と一緒に住むことになる。
 自分の母親も純玲をどう扱うかわからない。
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