離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「お義父さん、お義母さん、今日はありがとうございます」などと両親に挨拶しつつ、彼の視線は花嫁から外せないでいる。
 それに気づいた両親は「おじゃまね」「また後でな」と笑って部屋を出ていった。

「あぁ……夢みたいに綺麗だ」

 ふたりきりになると、泰雅は吸い寄せられるようにゆっくりと純玲に近付く。
 甘い台詞と視線に身の置き所がなくなってしまう。

「完璧にかっこいい花婿さんに言われても……」

 ついかわいくない言い方になっても許して欲しい。
 それほど今日の夫は素敵過ぎるのだ。

 今日彼が身に着けているのは濃紺のフロックコート。
 長めの裾で縦ラインが強調されるクラシカルでエレガントなデザインは着る人を選びそうだが、長身で引き締まった体形の彼に似合い過ぎている。
 試着の時からかっこいいと思っていたのだが、本番でさらに破壊力が増していた。
 蝶ネクタイでなくてアスコットタイなのもいい。さながら英国貴族のようだ。 

 本当にかっこいいとうっとりとしていると「奥様のお気に召したなら良かった」と泰雅は笑って、純玲を伴って部屋の中央にあるソファーに腰かけた。
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