離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました

（もし、肇さんと別れただけだったら、こんなに冷静ではいられなかったかもしれないな）
　
　純玲はさりげなく瑠美から視線を外すと、黙々と目の前の仕事を進めていった。

「ちょっと、純玲、聞きたいことがいっぱいありすぎるんだけど！」

　昼休み、同期の武井泉(たけいいずみ)に外ランチに連れ出された純玲は会社から少し離れたビル内の喫茶店でパスタセットを前に詰め寄られていた。

「えぇと、噂どおり、肇さんと別れました……あと、来月そちらに異動になります」

　泉とは入社研修時のグループで一緒になった縁からずっと仲良くしている。色白で綺麗な顔立ち、肩まで伸ばしている栗色の髪、スラリとした体形で儚げな印象の彼女ではあるが、仕事の能力もあり、入社当時から秘書室に勤務している。

「純玲が秘書室(うち)に来るって言うのもびっくりしたけど」

「もう、そっちでは情報開示されたんだ？」

「社長秘書の神崎(かんざき)さんがこっそり教えてくれたの『小野寺純玲さんって武井さんと同期でしょう？』って。あの人社長秘書の癖にユルいからね。どちらにしても今日明日中に周知されるでしょ？」