離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「純玲、朝だ。起きて」
「……んー」
(あぁ、なんていい声……)
純玲好みの低い艶のある声が耳元で聞こえる。まどろみながら聞き惚れていると、スマートフォンのアラーム音も鳴り響いていることに気付く。手を伸ばしてアラームを止めると目の前に声と同じく麗しい顔があった。
「純玲、おはよう。そろそろ時間」
「あ、せん……泰雅さん、おはようごさいます」
夫を“先生”と呼ぶのはおかしいから名前で呼ぶようにと言われているが、長年沁みついた“先生”呼びの癖はなかなか抜けない。寝ぼけていたらなおさらだ。
「朝食できてるから食べよう。顔洗ってきて」
そう言うと泰雅は寝室を出て行く。
「うぅ、今日も先を越されてしまった……」
純玲は今日も朝から広いベッドの上でひとり落胆する。
ここに引っ越してから1週間ほど経つが、まだ一度も彼より先に起きれたことがない。
あの日、無事に婚姻届けは受理され純玲は泰雅と夫婦になった。フットワークの軽い泰雅がどんどん調整し、次の週末には、お互いの家族にも改めて挨拶に行った。
純玲の実家はもちろんのこと、泰雅の実家である白石家でもこの結婚を歓迎してくれた。