離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「うん、よくできているね。さすが英語が得意だと聞いていただけある」

「よかったです」

 データを明日のテレビ会議用の環境にアップロードし、無事間に合わせることができた。純玲はホッと胸をなでおろす。

「遅くまですまなかったね。もう帰って大丈夫だ」

「はい、わかりました」

「――どう? 少しは仕事には慣れたかい?」

 片づけをしている純玲を見守りつつ神崎が話しかけてきた。
 彼はボスとは正反対で、物腰が柔らかく話しやすい。しかしかなりの切れもので、社長が腹心として傍においているのは若い頃から彼だけという話を泉から聞いていた。

「はい、みなさん良くしてくださるので」

 秘書室の先輩方は、人間的に成熟していて、純玲にまつわる噂を面白がることもなく親切にしてくれている。泉がいるのも心強い。
 慣れない仕事で緊張するし、疲れるが総務部にいたときよりやりがいを感じ始めている。

「不愛想なのは社長だけか。顔怖いからねぇ」

「い、いえいえそんな……社長のことそんな風にいえるの神崎さんだけです」

 正直に言うと、社長は怖い。口数も少ないし、巨大グループの頂点に立つ方だけあって近づいたらいけないような王者的なオーラがすごいのだ。
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