離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「いいえ、挨拶位で、ほとんどお話することは無くて。でも昨日はコーヒーをお出ししたら初めて『美味いな』と言ってくださったんです。先週実家でお父さんに貰ったコーヒー豆を使ったのが良かったのかもしれません」

 社長に淹れる豆だと言ったら、両親とも言葉を失っていたことを思い出す。

「お父さんもお母さんも百田に入社が決まった時にかなり驚いてたんですけど、まさか社長秘書になるなんて思わなかったんでしょうね。私も未だに、なんでわざわざ総務部から引き抜かれたのか分からない位ですから」

 神崎は社長の健康を考慮して人を増やしたといっていたが、それが自分である必要は無かったはずだ。自分より気の利く女性社員はゴロゴロいる。

「――従姉妹の方はどうだ?」

 泰雅は純玲の考えを断つように会話の内容を変えてきた。純玲の表情は浮かないものになる。

「相変わらず、ですかね」

 瑠美は純玲が花形部署の秘書室に異動になった上、社長秘書になったことが気に入らないらしい。普段はあまり会わなくて済むのだが、社内で出くわすと何かにつけて嫌味を言われるのだ。
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