離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
「そうだね。行っちゃおう、お互い残業しないようにがんばろう」

「オッケー、楽しみにしてる」
 そう言い交わしてふたりは仕事に取り掛かった。

 無事業務を完了し、純玲と泉は連れ立ってエントランスロビーに向かっていた。定時直後なので行き交う社員が多くざわざわとしている。

「……なんかさ、朝から思ってたんだけど純玲、妙に肌艶がよく見えるんだけど」 

「えっ」
 隣を歩きながら泉が純玲の横顔をじっと見てくる。

「何となくだけど、内側から満たされているような気がするのよねぇ。週末いいことでもあった?」

「んー? そ、そうかな。特に何も……」

 いや、心当たりはある。先週末、泰雅と再び肌を交わしたことをきっかけに、適切だったディスタンスがなくなった。彼に何かと触れられるようになったのだ。

 身体を求められるだけではない。おはようと額にキスをされ、おやすみと抱きしめられそのまま眠りにつく。今朝の出勤時も“行ってきますのキス”もされた。

(きっと、どれも『夫婦関係に真実味を持たせるため』なんだろうけど)

 わかってはいるが、この週末だけでふたりの関係は本当の新婚夫婦のようになってしまった。
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