離婚予定の契約妻ですが、クールな御曹司に溺愛されて極甘懐妊しました
 あまりの言い草に思わず足が止まってしまった。
 さすがに何か言った方がいいのだろうかと考えていると、純玲が動く前に泉は勢いよく振り返ると瑠美と対峙する。
 とうとう我慢ならなくなったらしい。

「あのねぇ、あんた純玲に何の恨みがあるのよ」

「恨み? 無いわよ。私は身を引いてくれた純玲ちゃんに感謝しているだけよ。こうして肇くんと結婚が決まったんだし」

 肇にすり寄りながら左手の薬指に嵌っている婚約指輪をわざとらしく見せてくる。肇も悪びれない顔で笑っている。こうすれば、純玲を貶めることができると思っているのかもしれない。でも今は関わらないで欲しいという気持ちしか覚えない。

「畜生」
 うら若き女性から出たとは思えない舌打ちと共に、泉は瑠美にさらに言い返そうとするので純玲は焦る。

(泉の清楚で美しい役員秘書イメージがこれ以上公共の場で壊れたらいたたまれない!)
 泉に憧れる男性社員は多いのだ。
 今までは仕事優先だった彼女がその気になったら恋活などしなくても彼氏なんてすぐにできる。

「泉、私、本当に大丈夫だから……」
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